河口湖の舎Ⅱ
富士山の眺望を存分に楽しみ、外からの視線はやわらげる伝統工法の家
屋根まで届く大窓から光が入り、吹き抜けのリビングや2階、ロフトから富士山の雄姿を眺めることができる家。寝室からは寝たまま富士山を眺められる。室内からの眺望は守りたいが、外からの目線は遮りたいもの。家正面のT字路側に車庫と物置を兼ねた長屋門を配置したことで、室内の人の気配よりもまずこの長屋門に目が行くようになった。
もともとご主人は、金物を使わない木組みの日本家屋で育ったという。そのためか伝統工法に興味があり、HPで見つけた中村建築事務所に木組みの家づくりを依頼。足にしっとりと馴染むアカマツの床材、ノミの跡を美しく残したマツの梁、質感のいい漆喰の壁、アイアン作家の手仕事による鉄製の手すりやオブジェも気に入っているという。
「中村さんとはよく「何を取るか」という話をしました。最初はピンと来なかったことも、住んでみるとなぜこれを勧められたのか分かります」と満足顔のご夫婦。例えばあたたかい家にしたかったので、吹き抜けの構造は冬寒いのではと懸念したが、薪ストーブがパチパチ言う音で目覚め、蓄熱式床暖房サーマ・スラブの熱を感じて、広がりのある空間で過ごすのは他に代えられない心地よさ。また、当初対面式を考えていたキッチンは、床面をリビングより一段低くした造りに。窓の外の景色を見ながら料理するのは気持ちよく、ブラックウォールナットのダイニングテーブルは最も長い時を過ごすくつろぎの場となった。デッキや庭に出てワインを楽しむのもいい。モミジなどの植栽はこの家にぴったりくるものが選ばれている。この自然素材の家で暮らしてから、幼稚園に通う息子さんの喘息が出なくなったのも嬉しい。